そのマゾは初めてSMクラブへやってきた。
光栄にもそれは本格的でラグジュアリーな場であるBabylonであった。これは私たちの栄誉とするところである。
SMショーは観たことがあるが、実際にミストレスと1体1でプレイするといった経験はこれが初だそうだ。
『男は女の初めてになりたがり、女は男の最後になりたがる』
とは言い得て妙で、私は彼の初めてになる。
始終緊張した面持の彼に、今までの性的体験について一通りヒアリングし、プレイは始まった。

私は彼の初めての女であり、最後の女でもあれば、ミストレスとしてこれ程の栄誉はないだろう。
『男の記憶は保存式、女の記憶は上書き式』
ともよく言うが、それが真理なら、彼がした体験は生涯保存されるであろう。それも初めて買ったビデオカメラで撮ったビデオのように。
お前たちの中にも、本当はしたくてもできないことがあり、勇気がなくて私たちの世界に足を踏み入れることを躊躇している者もいるだろう。
恐れることは無い。
私たちは気高きミストレス、女王である。
女王は絶対的存在。
それはなぜか。
私たちの決定には何一つ間違いがないからだ。
お前たちが恐れる隙など与えない、例えお前が恐れの感情に支配されても、さらにその上をいく快楽を最終的に与えることができる存在だからだ。
適度な緊張はプレイのスパイスだ。
始終ヘラヘラしている態度のマゾならば容赦なくぶちのめすだけだが、そうでなければその緊張は快楽への刺激となり、緩衝材ともなり得る。
よってこれを読んでいるお前たちマゾは、その胸の奥の奥に秘めた欲望を私という女王に吐露し支配され、解放すればいいだけの話なのだ。
要点は、お前たちがフィクションなAVで抜いているもしくはテキトーにアナルをいじくり回して痔になっている暇があるのなら、ノンフィクションを味わいに来る勇気をもて。
それだけだ。
それがお前たちの人生観を変える大きな一歩となる。そしてそれはモルヒネようにお前の脳に作用し、依存させる。
私たちは言うなればお前たちの脳内麻薬、女王だ。
