痛みとは何か。
肉体を切り裂かれることか?
いや違う。
私が考える痛みとは、自分自身と向き合うこと。
自分の未熟な部分、劣っている部分、足りない部分…。
可愛いとかかっこいいとか容姿や見た目の話ではない、性格や精神的なこと、いわゆる内面を指して【自分自身】と定義する。
お前たちが向き合うべき自分自身とは、他でもないお前たちの【マゾである】部分だ。
自分がいかにしてマゾであるのかを考えたことがあるか?
「戦隊物でヒーローが女悪役に痛めつけられているのを見て」
「彼女とのセックスで責められた時にMに目覚めて」
「試してみたらハマってしまって」
など、自分がいかにしてマゾ性を開花させたか、ルイの元にやってくるマゾはそのきっかけを自覚している者が多い。
しかし、本当にそういう理由でマゾ性に目覚め、自分をマゾだと思っているマゾのことを、誤解を恐れずに言うと、私は【浅い】と感じる。
「痛みをください」「苦しみをください」「叩いてください」「聖水をください」「黄金をください」
そっか、お前はそれが欲しいんだね、うんうん可愛い可愛いエゴマゾちゃん。
お仕事ですから、もちろん答えますよ。
でも、私はそれを求めているmistressではない。
私はね、マゾたちが私に教えてくれる「Mに目覚めたきっかけ」の多くは【嘘】だと思っているの。
本当のきっかけを、心の奥底ではわかっているけど、気付いていないフリをしている。
それはなぜか?
それに気付くことが【何者にも変え難く、そして耐え難い痛みであると理解しているから】よ。
気付かないフリをしていなければ、万が一にでもそれに気付いて自覚してしまったら…
自分を自分たらしめている【輪郭】を失うことになる。
心のどこかではそれがわかっているから、わざとそれらしい嘘を自分の心につき続けて逃げているだけなのよ。
でも、それを責めるつもりはないわ。
だってそれは、ジークムント・フロイトの言葉を借りるなら【防衛機制】であって、人間として当たり前の心の反応だから。
お前が弱いわけでも、悪いわけでもない。
その防衛機制に守られていなければ今の自分を保てない。
そんな過去の記憶をなんて言うか知ってる?
【トラウマ】よ。
・
ここまで読んで私の言っていることが本当の意味で理解できるマゾはどれくらい残っているのかしらね。
でも、納得感を感じている人も多いでしょう?
なぜかスっと心に落ちてくる安心感を覚えるでしょう?
大丈夫、それは正しい反応だから。
・
そのトラウマ的経験により、お前のマゾ性という秘められた個性が開花した。
いいえ、違うわね。
トラウマ的経験により自我が崩壊するのを回避するために、お前は自分で自分の中に【マゾ】という逃げ道を作った。
そしてそれ以来、辛い出来事がある度にお前は逃げ道を通ってマゾに逃げるようになった。
いわば現実逃避ね。
だから私の考える一番の痛みは、逃げたい自分、あの時逃げることでしか自分自身を保てなかった過去のトラウマと向き合うということよ。
・
どう?理解できた?
正直、この感覚を理解できるマゾは多いと思っている。
表面化していない潜在的なところにね。
ヒトはみんな、トラウマを告白するのが怖いし、変だと思われたくないし、恥ずかしい思いもしたくないの。
だからマゾの言う「女王様に変態性を受け入れて欲しいです」「辱めを受けたいです」というのはカモフラージュに過ぎないと思うの。
本当にそう思っているなら、浅慮なくお前のトラウマを炙り出し、今ここでそのトラウマと向き合わせて自我諸共崩壊してもらうわ。
想像するだけで怖気づいてしまうわよね。
それが私の考える最も強烈な痛みの正体よ。
ここまで書いておいてなんだけど【痛み】とも違うかもしれないわね。
お前たちが求めているのは痛みではなく【救い】なんですもの。
お前が望むなら、私はお前を救ってやることができる。
かつて自分自身のトラウマと向き合い、自分で自分を救った私にしかできない救済。
そして何よりも対象者自らが「救ってください」と、相応の覚悟を持って苦しみと救いの入り交じった世界に飛び込んで来る必要がある。
・
救われたい?
だったら迷わずいらっしゃい。
【痛み・苦しみ・救い】
全部同時に与えてあげる。
その両手にありったけの覚悟だけを握り締めて。
