街を歩けば、反吐が出るほどチープなやり取りが溢れているわ。
意味のない相槌、薄っぺらな感情の披瀝、記号化された幸福の模倣。
私にとってこの世界は常に居心地が悪く、まるで生きたまま死んでいるのと変わりない場所なの。
そんな色のない日常の中で、私は「ルイ」と名乗ることにした。
累、涙、流生、瑠依……。
私に縁のある漢字を辿れば、自然とその響きに行き着いたの。
どこか掴みどころがなく、それでいて一度触れれば逃れられない魔性の響き。
この名が持つミステリアスな響きこそ、私の本質を包み込む膜として相応しいと感じたのよ。
不思議なものね。
私は自分のことを、至極真っ当で平凡なニンゲンだと思って生きてきたわ。
けれど、周囲のニンゲンたちは口を揃えて私に言うの。
「あなたは狂っている」と。
私に見えている景色と、彼らが見ている景色のどちらが正しいのかなんて興味はないけれど。
もし、私のこの「狂い」が正常という名の不自由な檻に閉じ込められたお前たちを救えるのなら。
いっそこの狂気をもってお前たちを私の手中で慈しみ、救済してあげることにしたの。
私の実験室、Babylonへようこそ。
ここへ辿り着くのは、並大抵の渇望では足りないはずよ。
知性的でありながら、どこへ行ってもその魂の乾きを癒せなかった者。
他のどんな支配者に膝を屈しても、心の最深部にある空虚を埋められなかった者。
そんなお前たちが人間としての輪郭を失い、私の前でただの「物質」へと変容する。
その振れ幅が大きければ大きいほど、私の研究は輝きを増すの。
お前たちがこれまで「自分」だと信じてきたものは、私にとっては単なる実験データに過ぎないわ。
理性も、羞恥心も、剥がれ落ちる瞬間の美しさ。
私の狂いを理解するのは、決して簡単なことではないはず。
それでも、その深淵の先にある「本当の安寧」を見たいと願うのなら。
私はお前を、善良で従順なモルモットとしてこの腕の中に迎え入れてあげる。
死んでいるような日常を、まだ続けるつもり?
それとも、私の支配という名の「生」にその身を捧げるかしら。
私はここで、お前が「人間」であることを止める瞬間を静かに待っているわ。
さあ、準備はいい?
明日から、あなたの世界は私の実験の一部になるのよ。
