前回の記事で、私がBabylonに来ることになった運命の分かれ道について少しだけ触れた。
今日は、その続きを書こうと思う。
Babylonの創設者。
そして、ルイがこの世で最も尊敬する人の一人。
なぎささんとの出会いについて。
初めてお会いしたのは、2年前。
BabylonのHPに掲載するプロフィール写真の撮影の日だった。
第一印象は、とにかく掴みどころのない人。
「怖い人なのかもしれない」
そんなイメージもあった。
怒りそうとか、怒鳴りそうとか、そういう意味での【怖い】ではない。
もっと、本能的なもの。
【得体の知れないもの】に対する感覚に近かった。
今まで生きてきた中で出会った、どの人とも違う。
「こういう雰囲気の人は、きっとこういう人だろう」
今までの経験や、自分の中にある人間に対する統計。
そういうものが、まったく通用しない人だった。
同じクラブに在籍するmistressとして、私はちゃんとやっていけるのだろうか。
そんな不安を感じていたことを覚えている。
だけど、その印象は少しずつ変わっていった。
デビュー前の講習。
デビューしてから感じた、些細な不安や疑問。
どんなことに対しても、なぎささんはいつも真摯に向き合ってくれた。
私が出会った当初、なぎささんは在籍しているmistressたちのために、週に一度のSM研究会まで開いてくれていた。
多忙、なんて言葉を使うことすら恐れ多いほど忙しい人なのに。
それでも時間を作ってくれていた。
やがて研究会は、2週間に1回になり、月に1回になり、最近では2ヶ月に1回程度になった。
参加するmistressも少しずつ減っていった。
そして気付けば、ルイ一人のためになぎささんが時間を作ってくれる。
そんなことも、一度や二度ではなくなっていた。
今思えば、とても贅沢な時間だったと思う。
そこで、なぎささんが私に教えてくれたもの。
それは、【本物のSMとは何か】ということだった。
もちろん、「本物のSMとはこれです」と一言で言い表せるようなものではない。
私自身、まだその答えを持っていない。
きっと、一生をかけて追い続けるものなのだと思う。
そこに終わりはない。
そして何より、その時間を通して、なぎささんはルイのmistressとしての才能や感性を少しずつ開花させてくれた。
当時の私は、右も左も分からなかった。
マゾが何を求めているのかも分からない。
マゾから求められる「自分」というものも分からない。
何をすればいいのか。
どうすれば喜んでもらえるのか。
どんなmistressであればいいのか。
分からないことだらけだった。
そして、それがとてつもなく苦しかった。
耐え難いほど苦しかったことを、今でも鮮明に覚えている。
そんな私の疑問や苦しみに、なぎささんはずっと付き合ってくれた。
ライトなSM。
中程度のSM。
強度の高い、ハードなSM。
一般的には、ライト〜中程度のSMを求めるマゾの層が最も多い。
ならば、まずはそこにアプローチするべきなのではないか。
そのためには、何をすればいいのか。
そんなことを、ずっと考えていた。
でも、ある時ふと思った。
【SMを強度というベクトルで測るから、私は苦しんでいるんじゃないか】
ルイが求めているのは、どれだけ派手でハードなプレイができるか、ではない。
どれだけマゾを理解できるか。
どれだけ相手の心に近づけるか。
どれだけ心と心で繋がれるか。
つまり、目に見えるモノサシでは測れない種類のSMを、私は求めているのだと気付いた。
そう思えた瞬間、とても清々しい気持ちになった。
やっと、自分が何をしたいのか分かった気がした。
だけど同時に、新しい壁にぶつかった。
目に見えないSMを大切にしているということを、目に見える形で証明することができない。
ルイがどれだけ自分のSM論を語ったところで、
「それって、口先だけじゃない?」
そう思われてしまったら、私は何も言い返せない。
それが嫌だった。
だから、自分のSM論を文章にすることにも、どこか躊躇いがあった。
そんな煮え切らない気持ちを抱えていた私に、それでも言葉を届けてくれるマゾがいた。
「ルイ様のブログに感銘を受けて、会いに来ました」
その言葉を聞くたびに思った。
「伝わる人には、ちゃんと伝わるんだ」
「私の言葉や存在を必要としている人には、ちゃんと届くんだ」
そこで、ようやく気付いた。
私の目的は、私が迷っているかどうかにかかわらず、ちゃんと達成されていたのだ。
それ以外に、何が必要だろう。
――いいえ。
もう、充分じゃないか。
以前、なぎささんが私に言ってくれた言葉で、今でも強く印象に残っているものが二つある。
一つは、
「ルイさんは、私では取りこぼすであろうマゾの希望になれます」
という言葉。
とても恐れ多かった。
でも、それ以上に嬉しかった。
もう一つは、
「ルイさんって絶対に諦めないよね。いつも迷ったり悩んだり、もうSM好きじゃなくなっちゃうかなって思っても、絶対復活する」
という言葉。
「雑草みたいってことですか!?」
なんてふざけ合ったことが、昨日のことのように思い出される。
でも、その言葉を聞いて私はハッとした。
確かに、これだけ苦しんだのなら、もうSMが嫌になっても何もおかしくない。
幼い頃から飽き性で、部活もアルバイトも長続きしなかった私が、なぜかSMだけは辞めない。
どれだけ厚くて高い壁にぶつかっても、「辞める」という選択肢が浮かばない。
自分でも気付かないうちに、私はSMというものと想像以上に深く結びついていたようだ。
そして、それはなぎささんのサポートなしには、きっと実現しなかった。
それだけではない。
私のことを慕い、私についてきてくれるマゾたちの前から、無責任に消える。
そんなことも、今の私には到底許せない。
そういう価値観が自分の中に芽生えたのも、なぎささんとの時間が大きく影響している。
私がmistressであり続けるのは、ただSMが好きだからだけではない。
なぎささんが描いているSMの未来を、いつか一緒に実現したいから。
そして、そんななぎささんの大いなる愛のもとに、今のルイ自身が存在しているから。
だから私は、改めて思う。
私は【愛の女王様】として生まれたのだと。
なぎささんとの出会いがなければ、今のルイはいない。
私が迷った時も、苦しんだ時も、何度も立ち止まった時も。
なぎささんは、私が自分自身の答えを見つけるまで付き合ってくれた。
答えを与えるのではなく、考え続けるための場所を与えてくれた。
だから私も、これから先ずっと考え続けたい。
【本物のSMとは何なのか】
そして、ルイにしかできないSMとは何なのか。
きっと、答えに辿り着くことはない。
それでもいい。
終わりがないからこそ、一生をかけて追い続ける価値がある。
いつかルイが、なぎささんの右腕として胸を張れる日まで。
そしてその先も。
私は、mistressで在り続ける。
――なぎささん。
あなたに出会えたことを、私は一生忘れない。
ルイという女王様を生み出してくれたこと。
そして、ルイがルイであることを許してくれたこと。
そのすべてに、心から感謝しています。
