お前は、自分がマゾであることをどう捉えている?
これは、ルイがマゾと関わる上で、とても興味のあることのひとつよ。
「マゾである」ということを、自分の個性や性質のひとつとして捉えている人もいれば、どこかネガティブなものとして捉えている人もいる。
自分は普通ではない。
こんな性癖を持っていることを知られたくない。
できれば、マゾである自分から目を背けていたい。
そんなふうに感じている人も、一定数いるのでしょうね。
でも、私はそんなふうに捉える必要はないと思っているわ。
そもそも、お前という人間を構築しているものの中で、「マゾ」という要素は一体何%を占めているのかしら。
仕事をしているお前。
家族と過ごしているお前。
友人と話しているお前。
誰かを好きになるお前。
一人で何かを考えているお前。
怒ったり、笑ったり、落ち込んだり、喜んだりするお前。
その中のどれくらいが「マゾ」なのだろう。
もちろん、私との時間ではマゾである側面が強く表れるでしょう。
でも、それがお前のすべてではない。
むしろルイは、そこだけを見て終わりにしたくないのよ。
私は深いSMを好むからこそ、お前のことをもっと知りたいと思う。
マゾとしてのお前だけではなく、お前という人間を構築しているひとつひとつの要素を知りたい。
何を考えているのか。
何に惹かれるのか。
何を怖いと思うのか。
何を大切にしているのか。
どんな時に自分を好きになれて、どんな時に自分を嫌いになるのか。
そういうものまで含めて、お前なのだから。
そして、ここで少し怖いことを聞いてあげる。
もしルイに、お前の全体を見られるとしたら?
マゾとしての一面だけではなく、普段のお前も、弱いところも、格好悪いところも、隠しておきたいところも。
全部把握されるとしたら、怖いと思う?
……いいわね。
その恐怖、忘れないで。
私は、その感覚がとても大切だと思っている。
「見られたい」と「見られるのは怖い」。
その両方が同時に存在するからこそ、私たちの関係性はより深くなっていく。
自分の知られたくない部分まで知られるかもしれない。
それでも、この人になら見せてもいいと思える。
その感覚こそ、ルイが求めている深さのひとつなのよ。
そして、お前たちの中には、仕事や家庭など、様々な事情によって「マゾ」という自分から、そして「SM」という世界から、一度離れざるを得なかった時期を経験している人もいるわね。
忙しくなった。
環境が変わった。
生活の中でSMに割ける時間がなくなった。
理由は人それぞれ。
そうやってSMから離れている間、自分がマゾであることさえ忘れていたように感じる人もいるでしょう。
そんな時間を過ごしたあとで、ふとルイを見つけてくれる。
そして、
「ルイ様を見つけて、やっぱり自分はマゾなんだなと再認識しました」
なんて言葉と一緒に会いに来てくれる。
私は、こういう言葉がとても嬉しい。
ただ「SMをしたい」と言われることとは、少し違うのよ。
自分の中にある何かを、私をきっかけにもう一度見つけてくれた。
そのことを言葉にして、私のところまで持ってきてくれた。
それは私にとって、とても素敵な贈り物なの。
もちろん、
「なんとなく会いたいと思いました」
「前から気になっていて、会ってみたいと思っていました」
そんな言葉も嬉しいわ。
だけど、私は「言語化すること」「伝えること」にこだわりを持っているからなのかもしれない。
お前が一生懸命考えて、
「なぜルイに会いたいと思ったのか」
「なぜルイを必要だと思ったのか」
それを自分の言葉で伝えようとしてくれる姿を見ると、私はそこにお前の感性を感じる。
「ああ、この人は私のために一生懸命考えてくれたんだな」
そう思えるから。
そして、
「ああ、この人とは感性が近いのだな」
と感じることができる。
「なぜあなたを必要と思ったのか」
それを教えてもらえることは、ルイにとって幸せなことよ。
だからといって、私に会いに来るなら完璧な志望動機を用意してきなさい、なんて言うつもりはないわ。
そんなものを綺麗にまとめてこなくてもいい。
言葉にするのが苦手でもいい。
うまく説明できなくてもいい。
途中で詰まってしまってもいい。
それでも、自分の中にあるものを一生懸命伝えようとしてくれる。
私は、そんな健気な姿が好きなのよ。
上手に話すことよりも、伝えようとすること。
綺麗な言葉よりも、そこにある本心。
「自分でもよく分からないけど、なぜかルイに会いたいと思った」
それだって、立派な答えでしょう。
そこから一緒に紐解いていけばいい。
お前が自分自身のことを少しずつ知っていく。
そして私も、お前のことを少しずつ知っていく。
そうやって、最初は「マゾ」というひとつの要素から始まった関係が、いつの間にか「お前」という一人の人間そのものに触れる関係へ変わっていく。
私は、そんなSMが好きよ。
だから、自分がマゾであることを恥じなくていい。
それはお前を構成するたくさんの要素のひとつ。
そして私は、そのひとつだけを見るために、お前と会っているわけではない。
もっと知りたい。
もっと深く見たい。
そして、お前自身がまだ知らないお前の一面まで、いつか私が見つけてあげたい。
だから初めて会う時は、ほんの少しだけ考えてきなさい。
――なぜ、お前はルイを必要としたのか。
その答えを、ルイに聞かせてちょうだい。
